(単位)要求性能:Pa
|
旧規格
|
新規格
|
米国規格
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欧州規格
|
要求性能
|
種類
|
要求性能
|
種類
|
要求性能
|
種類
|
要求性能
|
取替え式
防じんマスク
|
80
|
RS1/RL1
RS2/RL2
RS3/RL3
|
70
70
80
|
全ての
マスク
|
115
115
115
|
P 1
P 2
P 3
|
80
93
160
|
使い捨て式
防じんマスク
(排気弁つき)
|
80
|
DS1/DL1
DS2/DL2
DS3/DL3
|
60
70
80
|
全ての
マスク
|
115
115
115
|
FFP1
FFP2
FFP3
|
80
93
133
|
使い捨て式
防じんマスク
(排気弁なし)
|
80
|
DS1/DL1
DS2/DL2
DS3/DL3
|
45
50
100
|
全ての
マスク
|
115
115
115
|
FFP1
FFP2
FFP3
|
80
93
133
|
2.4 新規格の概要と現行規格との相違点
a)捕集効率
前述のとおりで、現在の規格と比較しますと、相当にシビアですが、先進諸国の規格と対比しますと大差はありません。
新規格では、優劣の判定が初期値でなく、試験開始後から堆積終了までの間の最低値となりましたので、単純な比較は
できませんが、初期値だけで比較した場合、S1、L1クラスの最低値80%は、シリカ粉じんでの95%に、
ほぼ相当します。
また、S2、L2クラスの最低値95%は、シリカ粉じんでの99%に、相当しますが、新規格では、いずれも試験期間中の
低下も判定されますから、実力の差は初期値だけでは分かりません。
b)吸気抵抗と排気抵抗
前述のとおりで、現行の規格よりも相当にシビアになりました。
特に、防じんマスクの中核的存在である1〜2級(例えば、[RS1]、[RS2])の上限値は、欧米より非常に低く
抑えられています。
通気抵抗の上限値を上げるとマスクメーカーが抵抗を下げる努力を怠ると考える人が少なくないようですが、現代は販売競争の
時代です。
規格が緩いからと、通気抵抗の高いマスクを作っていたら、そのメーカーは商戦に勝てず、生き残れません。
一方、比較的、労働強度が低い作業の場合は、少々通気抵抗が高くても、コンパクトなマスクが喜ばれますが、
コンパクトなマスクは、通気抵抗が高くなりがちです。
このため、今回の新規格改訂により、コンパクトなマスクは残念ながら作りにくくなりました。
c)その他の相違点
1)【新設】吸気中の二酸化炭素濃度上昇値(1.0%以下)
マスクを装着すると、必然的に呼気の一部を再吸入するようになりますが、その割合が多いと健康に悪影響を与える恐れが
あります。
現行の規格の構造要件では、『死積(着用者の顔面とマスクの内面が形成する部分の容積)が著しく大きいものでないこと』
となっており、指定された計算式によって求めた死積を表示することとなっていました。
死積が大きくなると面体内の二酸化炭素(炭酸ガス)濃度が高くなるので、それを危惧しての規制でしたが、本来は、
二酸化炭素濃度そのもで規制すべきものでした。
新規格では、技術の進歩に伴い、マスク内の二酸化炭素濃度を直接測定し、上昇値を算出することとなっています。
2)排気弁の気密性試験
従来は、動的漏れ率試験でしたが、新規格では、作動気密試験となりました。
この試験方法は古典的なものですが、シビアなテスト方法です。
2.5 防じんマスクの使用区分
従来の規格では、1種類でしたが、新規格では、取替え式、使い捨て式、それぞれ、6種類となりました。
このため、新規格に合格したマスクは、ある時期から、種類や等級に応じて、下表に示す使用区分が規定される予定です。
その時期は未定ですが、合格したマスクが、おおむね普及した頃とされています。
この表が示すとおり、[RL3]は最高級ですから、どの場合にも使用できます。
表5 防じんマスクの使用区分
作業環境の例 |
使用できる防じんマスク |
オイルミストが 混在しない場合 |
オイルミストが 混在する場合 |
放射性物質による 汚染の恐れがある場所での作業
ダイオキシン類の曝露の恐れがある作業
その他、上記に準ずる作業 |
R L 3、R S 3 |
R L 3 |
金属ヒュームを発散する場所での作業
管理濃度が、0.1r/m
3
以下の物質の 粉じん等を発散する場所での作業
その他、上記に準ずる作業 |
R L 3、R S 3 R L 2、R S 2 D L 3、D S 3 D L 2、D S 2 |
R L 3 R L 2 D L 3 D L 2 |
上記以外の粉じん作業 |
すべての 防じんマスク |
L タイプの 防じんマスク |
2.6 新規格に対応する当社製品群
【RS1級】(NaCl粒子による試験合格品の最低クラス。固体粒子専用)
このクラスは、固体粒子専用ですが、食塩粒子以外の粒子状物資を捕集した場合、捕集効率が低下しないという保証が
ありません。
このため、捕集効率低下の恐れの大きいオイルミスト等が混在する環境での作業では使用を禁じられます。
また、捕集効率が低いので、オイルミスト等が混在しなくても、金属ヒュームの発散する溶接作業やダイオキシン類や特化物の
取り扱い作業では使用が禁じられます。
旧規格の検定合格品は、当分の間、このクラスと認定されます。
このクラスの代わりに、[RL1]を用いることができます。(その逆はできません。)
【RS2級】(NaCl粒子による試験合格品の中間クラス。固体粒子専用)
このクラスも、固体粒子専用ですが、NaCl粒子以外の粒子状物質を捕集した場合、捕集効率が低下しないという保証が
ありません。
このため、捕集効率低下の恐れの大きいオイルミスト等が混在する環境での作業では使用を禁じられますが、オイルミスト等が
混在していない場合は、金属ヒュームを発散する場所の作業等に使用できます。
(表5参照)
このクラスの代わりに、[RL2]を用いることができます。(その逆はできません。)
【RS3級】(NaCl粒子による試験合格品の最高クラス。固体粒子専用)
このクラスも、固体粒子専用ですが、NaCl粒子以外の粒子状物質を捕集した場合、捕集効率が低下しないという保証が
ありません。
このため、捕集効率低下の恐れの大きいオイルミスト等が混在する環境での作業では使用を禁じられますが、オイルミスト等が
混在していない場合は、[RS2級]で認められた作業の他、ダイオキシン類や放射性粉じんの取り扱い作業でも使用が
認められます。
(表5参照)
もちろん、放射線そのものを防ぐことはできません。
このクラスの代わりに、[RL3]を用いることができます。(その逆はできません。)
【RL1級】(DOP粒子による試験合格品の最低クラス。固体、液体粒子兼用)
Lクラスは、各種の粒子状物質を捕集しても、捕集効率が低下しないことが保証されていますので、作業環境中に
オイルミスト等が存在していても懸念する必要がありません。
ただし、捕集効率が低いので、ダイオキシン類や特化物の取り扱い作業では使用を禁じられます。
(表5参照)
本品は、[RS1]の代わりに、使用することができます。(その逆はできません。)
【RL2級】(DOP粒子による試験合格品の中間クラス。固体、液体粒子兼用)
Lクラスは、各種の粒子状物質を捕集しても、捕集効率が低下しないことが保証されていますので、作業環境中に
オイルミスト等が存在していても懸念する必要がありません。
また、[RL1級]より捕集効率が高いので、金属ヒューム(溶接ヒュームを含む)を発散する場所の作業や管理濃度が、
0.1mg/m
3
以下の物質の粉じん等が発散する場所での作業に使用できます。
(表5参照)
溶接作業に打ってつけの防じんマスクです。
本品は、[RS2]の代わりに、使用することができます。(その逆はできません。)
【RL3級】(DOP粒子による試験合格品の最高クラス。固体、液体粒子兼用)
防じんマスクの最高級品で、日本工業規格JIS T 8160(微粒子状物質用防じんマスク)のSS級相当品です。
Lクラスは、各種の粒子状物質を捕集しても、捕集効率が低下しないことが保証されていますので、作業環境中に
オイルミスト等が存在していても懸念する必要がありません。
このクラスは、捕集効率が極めて高いので、[RS2級]で認められた作業の他、ダイオキシン類や放射性粉じんの
取り扱い作業でも使用が認められます。
(表5参照)
もちろん、放射線そのものを防ぐことはできません。
当社では、20年前から、この形式を欧米に輸出しています。
[RL3級]は、オールマイティです。どのクラスの防じんマスクの代わりにも、使用することができます。
3.防毒マスクの規格改正点
3.1 適用範囲及び種類
防毒マスクを使用する作業等には、粒子状物質が混在する場合が少なくありません。
このため、今回の改正では粒子状物質を捕集できるフィルタ付きが、すべての吸収缶に規定されました。
フィルタの捕集効率は、防じんマスクの規格と同じ方法で設定されます。
区分も防じんマスクと同じで、NaCl粒子とDOP粒子に大別され、それぞれ、1〜3級に区分されます。
(表6参照)
表6 粉じんを捕集できる防毒マスクの区分
(単位:%)
|
S1,L1
|
S2,L2
|
S3,L3
|
粒子捕集効率下限値
|
80.0
|
95.0
|
99.9
|
なお、現行規格には、[亜硫酸・いおう用]の区分がありますが、亜硫酸ガスといおうの両方を捕集する必要のある場合は、
亜硫酸ガス用のフィルタ付きを使用すればすみますので、[亜硫酸・いおう用]の区分は無くなりました。
3.2 粉じんを捕集できる防毒マスク
a)粒子捕集効率
粉じんを捕集できる防毒マスクの粒子捕集効率は、
表6
のとおりで、表中の記号は、防じんマスクと同じです。
また、DOP粒子により検定された防毒マスクは、NaCl粒子により検定された防毒マスクの代わりに使用できますが、
その逆はできません。
b)通気抵抗
通気抵抗は、防毒マスクの種類及びフィルタの有無によって、
表7
のように定められています。
表7 吸収缶の吸気抵抗上限値
単位:Pa
区 分
|
フィルタのあるもの
|
フィルタのないもの
|
マスクの種類
|
捕集効率
80.0%
以上
|
捕集効率
95.0%
以上
|
捕集効率
99.9%
以上
|
隔離式
|
一酸化炭素用
|
310
|
320
|
400
|
280
|
上記以外用
|
同 上
|
250
|
直 結 式
|
280
|
290
|
370
|
220
|
直結式小型
|
同 上
|
3.3 その他の改正点
1)吸気中の二酸化炭素濃度上昇値
2)排気弁の気密性試験
上記につきましては、防じんマスクと同じですので、説明を省略させて頂きました。
3.4 新規格に対応する当社製品群
今回の改正のポイントは、フィルタ付き吸収缶ですが、これまた、既に、メカニカルフィルタ付きを始め、
エレクトレットフィルタ付き吸収缶も販売しておりますので、検定が開始され次第、直ちに受験できるよう
準備をいたしております。
4.おわりに
以上、防じんマスク及び防毒マスクの規格改正について、簡単な説明を申し上げました。
従いまして、不十分なところが少なくないと存じますので、お分かりにくい点は、当社営業部員にご照会下さいますよう、
お願い申し上げます。
【お知らせとお願い】
現行規格による検定試験は、労働省産業医学総合研究所殿で行われていますが、新規格検定は、
社団法人 産業安全技術協会殿 が担当されることとなっております。
技術協会殿では、着々と周到な準備をされていますが、何分、当初は検定申請が殺到しますので、申請
→
合格がスムーズになるまでには、2〜3年を要するものと思われます。
従いまして、ご希望の製品の検定合格が先延ばしになる事態も考えられますので、あらかじめ、ご了承下さいますよう、今から
お願い申し上げます。
また、先に記しましたように、新規格製品が出揃うまで、現行規格合格品は、S1級以外を優先すべきであると
考えております。
このため、新規格S1級の合格は、先延ばしとなりますので、併せてご了承のほど、お願い申し上げます。